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医療データを理解するために vol.1『公的医療保険制度』



 皆さん、こんにちは。JMDCの寺島です。


 気が付けば、5月の大型連休も終わってしまい、このコラムも年明けてお休みをしてしまっていたと反省しております。例年、年度末が忙しくなる傾向にあるこの業界で、まさにその波にのまれてしまっていました。いかがお過ごしでしょうか。


 学会シーズンでもありますが、各学会リアル開催中心となり、「日常」というものが戻ってきていますね。いくつかの学会にも参加してきました。現在お手伝いしている研究領域の情報収集だったり、リアルワールドデータ利活用の情報収集をしてきましたが、学会、疾患領域によって、データ利活用が進んでいたり、まだこれからという学会などさまざまで、興味深く話を聞いてきました。シンポジウムのタイトルに「リアルワールドデータ」と書いてあるけれど、話の内容は、「市販後」における介入研究報告だったりして、「リアルワールドデータ」の言葉の幅広さや曖昧さを感じた講演もありました。

 今年4月から、私たちのチームでは、製薬企業向けの研究サポートだけでなく、アカデミア向けのデータ提供や研究サポートの業務も行うことになりましたので、積極的に研究者の先生方との接点を増やしていきたいと考えている次第です。


 さて、私が所属しているJMDCという会社もここ数年でさまざまなデータを提供するようになりました。ビジネスとして活動しているため、さまざまなデータの取扱いが増えれば、その分、売上目標も高くなり、多様なデータを提供や活用サポートをするように会社から命じられるというのが、会社員の悲しいところです。こうした複雑な気持ちを抱きながら、今年度も少しコラムを書いていきたいと思います(笑)。

 このコラムも少し医療データの理解をしやすくするために、基本的なところからまとめていきたいと思います。今回は、知っているようで知らない人も多い、日本の公的保険医療制度についてです。



【社会保険】

 言葉としてよく出てくる「社会保険」「健康保険」「国民健康保険」・・・この違いから整理をしていきましょう。私も20年近く会社に勤めているようになったので当たり前になっていますが、一般的には、「社会保険」は、会社が従業員のために加入している各種保険や年金制度を総称とされています。

 「雇用保険」「労災保険」「健康保険」「厚生年金保険」(加えて「介護保険」)と呼ばれている各種保険に加入しているのはご存知のことかと思います。病気やケガをした時、出産した時、失業した時、高齢になった時など、働けなくなってしまうようなケースで必要な給付を受けられるようにして、労働者の生活を守ることを目的とした制度です。



【健康保険】

 さて、こうした「社会保険制度」の中の一つに「健康保険制度」というものが存在しており、「被用者保険」と「国民健康保険」と「後期高齢者医療制度」があります。


・国民皆保険制度

 日本では国民皆保険制度が採用されているというのはよく知られているところです。すべての国民が公的医療保険に加入し、全員が保険料を支払うことでお互いの負担を軽減する制度です。持病があって通院回数が多い人でも、入院や手術により医療費が高くなってしまう人でも、定められた負担割合で医療を受けることができます


・被用者保険

会社に勤める正社員や、一定の条件を満たした非正規社員は加入が義務付けられている公的な強制保険で、日本国民が病気やケガ備えられる制度で、個人ではなく、勤め先の会社を介して加入します。また、配偶者(事実婚などの内縁者を含む)や三親等以内の親族も加入することが可能です。

運営主体は、「健康保険組合」と「全国健康保険協会(協会けんぽ)」などがあり、運営主体のことを総称で「保険者」と呼んでいます。


国民健康保険

 日本では国民皆保険制度が導入されているため、国民は何かしらの公的医療保険に加入することになります。会社に勤める人など被用者保険に加入できる人がすべてかというとそうではありません。会社に勤めていないフリーランスや自営業、無職、年金受給者などは被用者保険の対象にならないため、その人を対象とした保険制度が国民健康保険です。国民健康保険には扶養という概念がないため、個人単位となります。そのため、扶養家族がいれば、その人数分の国民健康保険に加入することになるなど被用者保険の社会保険としての健康保険と少し保険料とは異なってくるものとなります。

 運営主体は被保険者が在籍する各都道府県が主体となり、各市区町村が行っているのも特徴です。


・後期高齢者医療制度

 さらに75歳以上については別のルールが存在しています。75歳の誕生日当日から後期高齢者医療制度の被保険者となり、もともと加入していた保険資格がなくなります。運営主体は、都道府県ごとに全ての市区町村が加入する後期高齢者医療広域連合が保険者となります。



【日本の公的医療保険制度】

 各健康保険に国民全員が加入していることで、日本の公的な医療保険制度は成立しています。この制度下で行われているのが、私たちが良く利用しているデータの元にもなっている保険診療による医療です。病気などで治療を受けた場合、患者となる被保険者は、医療機関に一部の負担金(3割のケースが多い)を支払います。残りは保険者(健康保険の運営主体)が審査支払機関を通して支払いをしています。ここで登場してくるのがレセプトやDPCと呼ばれるデータです。


 左図:保険診療の流れ  右図:日本の公的医療保険制度の特徴



 次回は、保険者(健康保険の運営主体)について述べてみたいと思います。




お問い合わせはこちら:E-mail gterashima@jmdc.co.jp


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