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コラム

治療実態を把握する研究をもっと手軽に



2023年、明けましておめでとうございます。JMDCの寺島です。

本年もよろしくお願いいたします。


久しぶりに行動制限がない年末年始、皆さんはいかがお過ごしでしたでしょうか?リフレッシュされた方も多いのではないでしょうか。私はここ数年、12月31日にベートーヴェンの交響曲全曲演奏会に行っています。年末の風物詩で「第九を聴く」というのがありますが、20年ほど前から大晦日にベートーヴェンが作曲した交響曲全9曲を一気に聴くという風変わりな演奏会です。13時ころから始まり、1番から順番に、途中で大休憩(食事休憩)もあり、「第九(9曲目の交響曲)」は23時30分くらいに終わります。ある意味で大晦日恒例の修行になってきました(笑)。皆さんもご興味があれば、今年の大晦日行ってみてください。


 さて、今年最初のコラムですが、JMDCデータでよく行われる治療実態を把握するための調査研究について考えてみたいと思います。私自身、疫学専門家ではないですので、学問的に記載内容が違っているかもしれませんので、ご了承ください。


それぞれの立場におけるデータベースの役割

 データベースは取り組む立場によってさまざまな調理することができます。


図1(立場によるデータベースの意味合い)


いずれも何かしらの患者数の把握や治療状況などを調査しているケースが多いかと思います。そしてこうした情報は実施者の立場が異なれば、まとめ方も変わってきます。メディカル部門や医療者という立場であれば、情報は論文や発表というパブリケーションという形で世の中に発信される情報になります。研究としての一つになるわけです。厚生労働省の「医学系研究の倫理指針」には以下の記載があります。



図2(医学系研究の倫理指針から抜粋)


さらに臨床研究においては、臨床試験、治験という枠も存在しています。



図3



当たり前のようですが、従来、製薬企業が主導で実施されてきた研究は、「臨床試験」や「治験」と呼ばれる領域であり、安全性や有効性を評価するものとして行われてきました。

 そうすると前述した「治療実態を把握するような調査研究」はどこに位置づけられるのか、「医学系研究(臨床研究)」の中ではあるが、「臨床試験」の外側に位置することになります。当然ながら、製薬企業主導ではこうした経験が少なく、研究の手順等も整備がされていないということになってきます。つまり、データベースを用いて行う研究は必ずしもこれまでの枠組みでは入らないケースもあるということを理解しておくことは重要となります。



実態を把握する調査研究の重要さ

 データベース研究では「臨床試験」のようなことはできないのか?というとそれは「No」になります。東京大学康永先生のRWDに関する入門書にも以下のような記載があります。



図4(データベースでできること)


 そしてその研究を実施するためには、クリニカル・クエスチョン(CQ)と呼ばれるさまざまな疑問を持つことからスタートし、PECO(PICO)形式の検証可能なリサーチ・クエスチョン(RQ)に整理することが重要と言われています。もちろん、その検討過程において、データベース研究の場合ならではの検討項目もあるが、これは別の機会に触れたいと思います。


 さて、そのCQは、製薬企業ではどのように生まれてくるのか?というと、


  ・医療者とのディスカッション、医療者の治療課題

  ・自社医薬品の製品戦略上

  ・実際の治療実態から


こんなところから生まれてくるのではないでしょうか。CQはここでいくつか出てきたからといって、すぐにそれをテーマに研究ができるかというとそうでもなさそうです。その中で、RQを整理し作っていく必要があります。ここで重要になるのが、対象とする疾患の実態調査の情報です。実態がこうだから、仮説がこうかもしれないというような発想で研究は進んでいくことが自然だと思います。とはいえ、実態というのが把握できていないというのが現実です。その把握の方法としては、医療者からのヒアリングもあるかもしれませんし、レセプトやDPCデータを用いて把握するということも手段の一つかもしれません。それを組み合わせて把握するということもあり得ます。


 いきなり何かを検証したりするテーマの研究をするとなると、情報が不足しているケースが多いですので、やはり実態を把握しておくというのは大事なステップになるところです。こうした実態把握では記述疫学研究と位置付けられているかと思いますが、こうした情報をまとめておく(パブリケーションしておく)ことで、さまざまな仮説の検討をスムーズに進めることができるというのが、研究としては自然な流れであり、特にデータベース研究の場合は重要になってくるのではないかと感じています。仮説検証するための臨床試験もデータベースで実施できそうなのか、それとも別の手段がいいのか、そういう判断もしやすくなります。


実態把握はもっとお手軽に

 シンプルに患者数を把握したり、治療薬や処置の人数等を集計する、メインは頻度集計となります。そして、集計結果をさまざまな視点で見ると、いろいろなことを論じることができそうです。つまり、次の研究につなげるための情報であるため、もっとお手軽に取り組んでみればいいのでは?と思っています。

 結果として出てくる帳票は膨大なものになるかもしれませんが、さまざまなパターンで対象者を決めてみたり、人数を集計することで、データのリミテーションの理解にもつながります。どうまとめるかは、恐らくその時の注目しているもので変わってくると思いますので、ある意味でいくつも論文を出すことができる、そんな情報のような気がしています。

 データベースを積極的に活用するのであれば、社内の手続きや取り組みなども新しい概念(大袈裟ですが)をもって検討していくことも重要かもしれません。



お問い合わせはこちら:E-mail gterashima@jmdc.co.jp


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