②リアルワールドデータの実際の利用シーン
リアルワールドデータは、実際にどのように利活用されているのでしょうか。
これまでのところ、日本でのリアルワールドデータの利活用は、アカデミアや製薬企業によって行われるケースが多く、下記のようなテーマの調査・研究で活用されます。
疾患の基礎的理解のための調査(患者数、有病率、患者背景など)
薬剤の処方状況の調査(患者数、用量、併用、適正使用状況など)
薬剤の安全性調査(薬剤曝露下における合併症など)
薬剤の費用対効果評価検証
リアルワールドデータが活用できなかった時代には、こうした調査は限られた施設で実施されることが多く、大規模な調査は難しかったのですが、リアルワールドデータによって大規模な調査を行うことが可能になり、より詳細な実態が見えてきつつあります。
また、最近では活用できるデータの量や項目の拡大により、その活用のシーンは更に拡がりを見せています。例えば、医薬品の市販後の安全性調査などでの活用も進んでいます。
こうした取り組みの中で、一部医薬品では、臨床試験を実施する代わりに、リアルワールドデータを活用して安全性などの検証が行われ、その結果をもって薬が承認されるといった実績も生まれつつあります。
更に、アカデミアや製薬企業以外でも、様々な形での利活用が行われています。
例えば、患者さんが多くの薬剤を処方され、結果として服薬過誤やアドヒアランスの低下などに繋がるポリファーマシーという問題があります。
ポリファーマシーが発生する原因の一つに、患者さんが複数の医療機関を同時に受診しているケースがあります。これは、医師が他の医療機関での処方薬を把握していないことが原因と考えられます
リアルワールドデータを活用することで、こうした実態を把握したり、患者さんや医師に状況をフィードバックすることで、適切な薬剤の処方に繋げようとする動きがあります。
また、リアルワールドデータを活用した生活習慣病の改善及び重症化予防の取り組みも盛んに行われています。具体的には、各疾患における重症化リスクの高い患者さんを機械学習(事例となるデータをコンピューターに学ばせること)を用いて、予測する方法です。重症化リスクを予測するためには、年齢、性別、健康診断情報、投薬情報、医療費、既往例など膨大な量の情報が必要になりますが、まさにこれはリアルワールドデータそのものです。コンピューターに収集されたリアルワールドデータからハイリスク群の患者さんに対して受診通知や生活習慣指導を促すことで、重症化を予防する取り組みが行われています。
これからも利活用できるデータが増え、データを解析する技術やテクノロジーが向上することで、ヘルスケアの領域での様々な利活用が期待されます。
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