活用できる医療データを整理する
皆さん、こんにちは! JMDCの寺島です。
この原稿を書いているタイミングでは、コロナ新規患者がまた増えつつあり、緊急事態宣言の要請が国に行われようとしています。ワクチンの接種も高齢者に開始されようとしている一方で、変異株の影響もあるというまだ先が見えない状況が続いています。せっかくのゴールデンウィークも昨年と同じように自宅で過ごすという動きになりそうですね。
個人的には、昨年会議が中止され、世界自然遺産候補地のままとなっている『奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島』の世界遺産登録の動向がそろそろ気になっているこの頃です。(日本では5番目の世界自然遺産となる予定です)
さて前回は、『JMDC研究支援の紹介 その1』と題してお届けしましたが、研究支援の紹介を深堀する前に、そもそも、研究の試料となる医療データベースについての理解のために、さまざまな切り口で解説をしたいと思います。同じデータでも収集元が異なることによる違いやその特徴などをご紹介します。
【データの種類】
日本において利活用ができる医療データは、大きく分けると以下のようなデータが作成されています。
◆レセプトデータ
保険加入者が受けた診療内容について、保険医療機関や調剤薬局が「保険者」に対して、かかった費用を請求するために発行する請求明細書のこと。(図1)
図1 レセプト(診療/調剤報酬明細書)データ
◆DPC調査データ
DPCとは入院患者を対象に傷病名と入院中の主な処置などの組み合わせによる『診断群分類』のことで、それに基づいて医療費が定額支払いされる制度のことをDPC制度と言います。そして、この制度を利用する病院が、レセプトデータとは別に、カルテやレセプトの情報をもとに厚労省に提出するデータのことをDPC調査データと言う。(図2)
図2 DPC調査データ
◆電子カルテ(診療録)データ
診療の経過とともに臨床検査の結果の取り込みもされており、レセプトやDPC調査データとも異なり、より患者の詳細な情報が分かるデータ。(図3)
図3 電子カルテ(診療録)データ
上記のようなデータの種類がありますが、このデータは日本の皆保険制度下においては図のような場所でデータが作成されていて、取得が可能な状況です。(図4)
図4 データの収集元からのデータ区分
ここからは収集元におけるデータの特徴をまとめてみました。
◆保険者(健康保険組合から収集)ベースのデータの 特徴
保険者ベースの最大の特徴は『患者の追跡性』です。とはいえ、収集できるデータはレセプトデータということもあり、データで取得できる内容には限界点もあります。(図5)
図5 保険者(健保組合から収集)ベースのデータの特徴
◆医療機関ベースのデータの特徴
レセプトデータだけでなく、DPC調査データや電子カルテデータも存在しているため、患者の病態等の情報把握もできますが、施設が変わると患者が追跡できないという限界点もあります。(図6)
図6 医療機関ベースのデータの特徴
◆調剤薬局データベースの特徴
調剤薬局から収集しているデータは、速報性はあると言われていますが、調剤レセプトが主なデータソースであるため、把握できる情報には保険者ベースのデータよりもさらに限界があります。(図7)
図7 調剤薬局データベースの特徴
同じレセプトデータと言っても、収集する場所が異なると、その特徴も異なります。残念ながら、研究のテーマをすべて解決する医療データと言うのは、稀有であるのは、皆さんご存知のとおりです。そのため、どのようなことが得意で、どのようなことに限界があるのか、研究結果でどのようなメッセージを想定しているのかにより、優先順位をつけてデータを選択する必要性があります。
私たちJMDCのデータベース研究のサポートチームは、研究テーマの相談から適切なデータの選択、場合によっては新たなデータ取得など幅広くご相談を受けておりますので、お気軽にご相談ください。
お問い合わせはこちら:E-mail gterashima@jmdc.co.jp
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