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COOに聞く!Vol.7 RWDが製薬企業の経営に与えるインパクト

もう製薬企業で、RWDを使っていないところはないと言っても過言ではないほどにRWDの活用は製薬業界に浸透してきたと思います。一方で、RWD活用度合いとしては企業によって大きくばらついておりまだまだ活用の余地のある企業が多いというのが、我々の実感でもあり、そして事実だと思います。今回はRWDの活用により、製薬企業においてどのような経営インパクトが起きているのかを触れられればと思います。


COO 杉田 玲夢 NTT東日本関東病院、東京大学医学部附属病院での研修を経て、ボストンコンサルティンググループにて、ヘルスケア領域のプロジェクトを多数経験。 その後、株式会社クリンタルを創業。2018年にJMDCによる子会社化に伴い、COOに就任。デューク大学MBA。


杉田:JMDCのCOOの杉田と申します。今月は「RWDが製薬企業の経営に与えるインパクト」というテーマです。RWDの活用方法などを取り扱っていたこれまでの回よりも、少し目線の高い内容になります。企業目線で、実際にRWDを取り入れると何が良くなるのだ、という点に関して触れてみたいと思います。


穴吹:製薬本部マネージャーの穴吹と申します。本記事では私がインタビュワーとなって、進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。今回はだいぶこれまでと違ったテーマですね。確かに私もレセプトデータの提供を行っていて、かなり高額なものであることは間違いないですので、それによって企業レベルでどういう効果が出るのかは気になります。


杉田:まずは、製薬会社でのRWDの活用度合いの現状を理解すべく、こちらのグラフをご覧ください。

こちらは弊社が提供している、RWDをさまざまな条件で手軽に分析できるソフトウェアの年間使用回数を各社ごとにまとめたものになります。RWDを分析する際に、ソフトウェアから弊社のDBの方にアクセスが来ますので、その回数を数えたものになります。これをみていただくと明白なように、企業によって活用の頻度が大きく異なっています。簡易的なソフトウェアですので、レセプトのローデータと違い、データサイエンティストや統計の専門家でないと触れないというものでもなく、誰でも分析できるものなのですが、年間5000回分析している企業もあれば、年間200回程度にとどまっている企業もあります。


―――本当ですね。かなり大きな差が見られますね。確かに企業によっては、各部門が弊社のツールを適当に使わないように、いくつかの部門に限定した活用にしてしまっているという話も聞きます。この活用度合いの差はどのような背景なのでしょうか。


杉田:そうですね。おっしゃるように直接的にはそのようなツールの活用ルールという理由もあるかもしれません。または、新薬の上市前後、パイプラインの導入前、などツールを活用した市場規模の分析が頻繁となる時期もありますので、各社のパイプラインの違いというものもあるかもしれませんし、純粋にRWDに長けている方の人数の差かもしれません。


ただ、やはり一番は企業の文化の差だと思っています。各部門で新しいものを取り入れる文化があるか、一部門の優れた取り組みが横展開される文化があるか、などの違いが大きく、または、データを積極的に活用するようにトップからメッセージがでているかどうか、もあるかもしれません。


とにかく上のグラフからは、企業によりRWD利活用には現状これだけの差があるとご理解いただければと思います。


―――それでは今回のテーマでもある、RWD利活用によって経営にどのようなインパクトがあるかに関してお話いただけますでしょうか。


杉田:そうですね、それに関しては早速ですが、こちらのグラフをご覧ください。

こちらは、製薬企業の各社を直近3年間における弊社サービスの購入額に応じて3グループに分け、各社のIR資料など公開資料をひたすら読み、売上の成長率、利益の成長率の平均値を示したグラフになります。直近3年間で、弊社サービスを1億円以上購入いただいている企業を「かなり活用」、1000万円~1億円の企業を「若干活用」、1000万円以下を「活用なし」と表現しております。ただ、この分類はあくまでも、弊社に関する部分だけでのRWD活用のグルーピングですので、他のデータベンダーからの購入額も合わせると実際には変わってくる部分はあると思うのですが、そこまで調べることは容易ではありませんので、それはさておきまず左側のグラフをご覧ください。


売上の成長率を各グループで平均を取り、さらにそれを内資系と外資系に分けて表示しています。これを見ると、内資外資どちらでもRWDを活用している度合いが高いほど、成長していることが見て取れます。昨年はコロナ禍の影響を強く受けた年であり、内資系の活用なしのグループではマイナス成長になっていますが、RWDをかなり活用のグループは4.6%の成長となっています。外資においてはどのグループも4,5%程度ベースが上がっていますが、傾向としては同じことが言えます。


―――そもそも外資系の売上成長の強さも気になってしまいますが、確かにそう見えますね。利益率のグラフの方は綺麗にそうなっていないように見えますが、こちらはいかがでしょうか?


杉田:右側の利益成長のグラフに関しては、見てお分かりの通り、内資系の若干活用のグループが突出してしまっています。事実は事実ですので、そういう結果なのですが、計算に用いた利益としては営業利益もしくはEBITDAのどちらかを用いていまして、事業に投資する金額によっては容易にマイナスにもなるし、コスト削減を積極的に行えばプラスにもなるというところで、売上よりも恣意的に変動を起こしやすいものではあります。実際に今回のグラフでも数社突出した利益成長を見せている企業があり、その結果真ん中のグループがずば抜けて良いというように見えている状態になります。


ただ、外資系では利益に関しても売上と同様にRWD投資額が多いほど成長率が高いということが見て取れると思います。


ここまでお伝えしましたが、RWDに投資したから企業の成長が加速したのではなく、成長していて余裕があるからこそRWD投資ができるのでは、という鶏と卵の関係を想起する方も多くいらっしゃると思います。正直この因果関係の証明はできませんが、エクセレントカンパニーはRWD投資額が多い、というのは事実です。普段製薬企業の方と接する中で、RWDを活用することによって新薬の対象患者数が大幅に増加した、市場規模を読み間違えていたことがわかった、ということもしばしば発生するのを目にしています。それによって開発のgo/ no goといった経営判断の精緻化や、売上目標と投下リソースの最適化といったことが起きると、やはりRWDは企業レベルでインパクトがあるものだと考えています。


―――なるほど、ありがとうございます。最後に何かございますでしょうか。


杉田:以前RWD組織に関して書いたコラムの中でも少し触れましたが、RWDの活用が属人的になってしまっている企業もとても多いです。他方で、そこから脱却されようとRWD専門組織を立ち上げたり、RWD利活用促進の社内横断プロジェクトを始められる企業も、年に5~10社ぐらいはある印象です。私個人としては、今回の分析を踏まえて、日本国内の企業の成長が海外に比べ大きくビハインドしている状態も寂しくありますので、ぜひRWDを活用した企業成長に目を向けていただけますと幸いです。


―――ありがとうございます。それでは今回もこのあたりで終了とさせていただければと思います。JMDCはRWD組織の立ち上げや利活用促進、文化の醸成などもサポートしておりますので、興味を持たれた企業の方からのご連絡をお待ちしております。


お問い合わせはこちら:https://www.jmdc.co.jp/inquiry/

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